病気のお話し

潰瘍性大腸炎


大腸の、主として粘膜にびらんや潰瘍を形成する原因不明のびまん性非特異的炎症で、経過中に再燃と緩解を繰り返すことを特徴とし、クローン病とともに炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease; IBD)とよばれています。

症状は粘液の混ざった血便、下痢、腹痛などですが、重症度が増すと発熱や頻脈、体重減少などの全身症状が出現することがあります。臨床所見と内視鏡検査によって診断がなされますが、感染性腸炎やクローン病、放射線照射性大腸炎、薬剤性大腸炎、虚血性大腸炎、腸管ベーチェット病など鑑別を要し、大腸の組織検査や便の細菌学的検査(培養検査)など総合的な検査が必要です。治療は、病変の範囲(直腸炎型、遠位大腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型)と重症度(軽症、中等症、重症)により異なりますが、内科的治療として5-ASAやSASP製剤、ステロイド、免疫抑制薬、血球成分除去療法などの他、治療抵抗例や再燃を繰り返す場合は、生物学的製剤(抗TNF−α製剤)も有効とされています。また、大出血や穿孔、内科的治療に抵抗する場合は外科手術(大腸切除術)が選択されることがあります。

潰瘍性大腸炎は、「特定疾患」に認定されており、特定疾患受給者に認定されれば通院や入院でかかった医療費が毎月一定額の支払いで済むことができます(症状が軽い場合は特定疾患に認定されないことがあります)。近年、日本で患者数が増加しており、2013年の登録患者数は16万人を超えており(1973年は965名)、身近な疾患になりつつあります。

治療の目的は、「寛解の維持」、つまり症状が改善した状態を維持することです。繰り返し再燃したり、入退院を繰り返すと生活の質を損ねる可能性がありますので、中断せずにきちんとした治療を受け、よい状態を維持することが大切です。
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